大村さん、大企業ではジョブ型雇用が主流になりつつありますが、ウチでもそろそろジョブ型雇用を検討しなければならないのでしょうか?
先日、とある経営者から受けたご相談です。
経団連は「ジョブ型雇用の導入・活用を検討する必要がある」と結論づけました。
日立製作所やKDDI、三菱ケミカル、資生堂は、管理職だけでなく全社員にジョブ型雇用を導入し、電機組合連合も「ジョブ型は一概に否定するものではない」としています。
しかし、大企業が相次いでジョブ型に切り替えているからと言って、中小企業も安易に切り替えた方がいいかどうかは注意が必要です。
ジョブ型雇用とは?
ジョブ型はその名の通り「仕事」について評価し、処遇に反映します。
「人」について支払うわけではありません。
従来の日本型雇用では「人」に支払ってきました。仕事もジョブローテーションで、仕事が変わったからといって賃金が変わることはありません。
一方で、ジョブ型は、「仕事」に支払うので、社員にどんな仕事をしてもらうかにより賃金が決まり、高度な仕事ほど、賃金は高くなります。そのために必要なスキルは何かを職務記述書に明確に記入していきます。
「人」について支払うわけではないので、賃金の決定に年齢や勤続年数は関係ありません。賃金は固定化され、賃金を今より高くするには、専門性を上げて高度な仕事ができるようにするしかありません。専門性があがらなければ、何年会社にいても同じ給料ということになります。
ジョブ型雇用では、従来の日本のような「毎年4月には当然のように定期昇給やベア」ということはありません。ということは、ジョブ型雇用になるということは終身雇用ではなくなる、ということになります。
昨年は、サントリーの新浪社長が45歳定年制について発言して大炎上になりました。またトヨタ自動車の社長も「終身雇用を守っていくのは難しい局面に入ってきた」と発言しています。
実際にジョブ型は欧米から生まれたものですが、仕事に対して支払っているので、パフォーマンスが低いと退職勧奨になりますし、その仕事がなくなれば解雇もできます。
日本は労働基準法で解雇には厳しい制限がかけられていますが、ジョブ型雇用に移行するということは、平たく言えば、「当社では終身雇用を辞めます。 これからは今やっている仕事のスキルが上がらないといつまでたっても賃金はあげませんよ」という意味になります。
ジョブ型雇用のメリット・デメリット
ジョブ型には、もちろんメリットはあります。人件費の原資や自社の競争優位性、専門性向上という視点から考えれば、確かにジョブ型雇用は望ましいでしょう。
ただ、ジョブ型雇用にはデメリットもあることを留意しなければなりません。
例えば以下の点が挙げられます。
- 職務記述書(ジョブディスクリプション)を作成しなければならない
→やってもらう仕事は何か、スキルは何かをあらかじめ決めておいて職務記述書に明記しておく必要があります。 - 他にやってほしい仕事があっても、決められた仕事以外は評価の対象にならないので非協力的になる
→他にやってもらいたい仕事があっても職務記述書に記載されていない仕事は評価対象にはならないため、協力しようという気持ちがなくなります。 - 他部署への異動ができない(ジョブローテーションができない)
→仕事が固定化されるので、今までのように適材適所といって人事異動ができません。 - 職務を明確にして求人するが、今の時代、即戦力となる人財は簡単に採用できない。
→高度な仕事ができる人材には高い賃金を提示する必要があり、即戦力の人材を集めるには相当求人難易度が高くなります。 - 自分の担当業務の成果で評価されるため、評価につながらない仕事はやろうとせずチームワークが生まれにくく、個人商店化しやすい
- 仕事と給料が固定化されるので、同じ条件で自社よりも待遇のいい会社があれば転職して社員が定着しない
→定期昇給がなく、仕事と賃金が固定化されるということは、同じ仕事ならより待遇のいいところに転職しようとなり、人財の定着にはつながりません。
ジョブ型雇用は確かにメリットもありますが、デメリットととも隣り合わせだということに気を付けたうえで導入する必要があります。
あなたは、ジョブ型雇用をいいと思いますか?
例えば、医療機関の看護師のように最初からジョブ型になっている仕事もあります。看護師は、医療機関によってやる仕事が全く違うということはありません。結果としてどこの医療機関も「看護師というジョブをできる人がいればぜひ来てほしい」と思っていますので、看護師はより待遇のいい職場へ転職しやすくなっています。
あなたの会社は、人材の定着や成長、会社の発展を考えたときジョブ型はいいと思いますか。
ジョブ型のいいところと従来型のいいところは何か?
これを考えて自社に合う人事制度を導入することで、会社と社員の発展につながります。
以上を踏まえたうえで検討してみて下さい。
このようなことにご興味がある方のため、無料相談を実施しておりますので、ぜひご利用ください。
メルマガで新着コラムを配信中
- メルマガをご登録いただきますと、コラムを継続的に配信します
- 不要になりましたら、すぐに解除できます
- ご興味がありましたら、ぜひご登録ください