「複線型人事制度」というのを聞かれたことはありますか?文字だけでみると、なんだか難しそうと思われるかもしれませんが、実はそれほど難しい制度ではありません。

電車に乗ると、ほとんどの路線では上り方面と下り方面で2つの線路が並行して走っています。
これが複線です。

一方、地方のローカル線では、線路が一つしかない路線があります。
これが単線です。

単線の場合は、駅で上りと下りで二つの線路に分かれて、上り列車と下り列車がぶつからないように待ち合わせします。

中堅層の2つのコース

人事制度も同じです。一般層を卒業して中堅層に昇格するとき、

  • 【リーダーコース】
    部下育成をするリーダーへ進む道
  • 【マイスターコース】
    卓越したプレイヤーだが人を育てることがどうしてもできないためにマイスターへ進む道

という2つの道があるのが複線型人事制度です。

リーダーコースとは?

リーダーコースは、ゆくゆくは幹部層に進み、会社を引っ張る経営幹部となるコースです。

一般層のときは、プレイヤーであり、「自分で仕事をして成果を出せばいい」という立場でした。

しかし、リーダーになると、自分で仕事をして成果をだすだけでは足りず、部下育成力が求められます。自分で仕事をして成果を出すだけでなく、一般層の部下を育成して部下に成果を出してもらわなければなりません。

部下指導は、中堅層になって初めて経験するわけですから、できないのは当たり前です。リーダーコースへ進んだ人に、最初からマネジメントスキルを期待してはいけません。

中堅層のうちに部下育成力を身に着けて、部下を育成できる実績を出したら中堅層を卒業して幹部層に昇格できるのです。

マイスターコースとは?

中堅層のもう一つのコースとしてマイスターコースがあります。

マイスターとは、卓越したスーパープレイヤーとなり、技術力で会社を引っ張る存在です。

社内には、スーパープレイヤーではありますが、どうしても人材育成には向かない人もいます。もしもマイスターコースがなければ、彼ら・彼女らは人材育成ができないからという理由で、中堅層に昇格することができません。それではモチベーションが落ちてしまう危険性があります。

スーパープレイヤーとして会社を引っ張る人も、社内には必要です。スーパープレイヤーに活躍し続けてもらうために、このコースを設けることには意義があります。

複線型人事制度のNG例

複線型人事制度を設ける場合、実は3つのNGポイントがあります。

  • 1.「この社員は人材育成ができないからマイスターコースに進んでもらおうと」会社が勝手に決めてしまうこと
  • 2.マイスターコースの評価基準が甘いこと
  • 3.部下育成に向かないからではなく、したくないからマイスターに進もうと思われてしまうこと

順番にみていきましょう。

1.「この社員は人材育成ができないからマイスターコースに進んでもらう」と会社が勝手に決めてしまうこと

人材育成は適性はありますが、本人はリーダーコースに進み、マネジメントを身に着けたいと思っているかもしれません。一般層を卒業して中堅層に進むとき、面談して本人の意思確認をする必要があります。

今まで一般層だったので、最初からマネジメント力を発揮できるわけではありませんが、中堅層は人材育成を学ぶステージです。

本人の希望とキャリアのゴールを明確にしたうえで、どちらのコースに進むのかを話し合うことが必要です。

2.マイスターコースは評価基準が甘いこと

マイスターは、スーパープレイヤーですが、一般層を卒業した社員です。

リーダーコースに進んだ社員が3人の部下を育成して成果をあげるなら、マイスターコースに進んだ社員は一人で3人分の仕事をすることが評価につながる仕組みになっている必要があります。

一般層と評価があまり変わらないとマイスターコースの方が楽だからという理由でマイスターに進む人がでてきますので、マイスターに何を求めるのかを明確にする必要があります。

一般層と同じ仕事をしていては評価は低くなるような制度にしなければなりませんし、人材育成と同じ位、高いレベルを出さなければ評価されないようにする必要があります。

この仕事を極めるくらいの気概がマイスターには必要です。

3.部下育成に向かないからではなく、したくないからマイスターに進もうと思われてしまうこと

部下育成は確かに大変です。

中堅層に進むくらいですから、自分が仕事で成果を出すのはそれほど難しくはないでしょう。

しかし、リーダーコースへ進むということは、部下を動かして成果を出してもらう必要があります。今までとは違う能力が求められますので、難しそうだと考える方もいるでしょう。

ただ、「人材育成をしたくないからマイスターコースに進む」と安易に選択されてはいけないということです。

「背中で覚えろという言葉通り、人に教えることが苦手という職人(社員)が多くて困る」という相談を受けますが、今まで教えるという習慣がなければ最初は誰でも戸惑います。

部下を育ててもうらうのか、険しい道ではあるが、仕事を極めてもらうマイスターになってもらうかをよく話しあってみてはいかがでしょうか。

あなたの会社では、複線型人事制度は機能していますか?


このようなことにご興味がある方のため、無料相談を実施しておりますので、ぜひご利用ください。

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