「この時期になると、社員にいくら賞与を出していいか毎回悩みの種だ・・・」

「今期はあまり利益は出ていないが、昨年とあまり違い過ぎると不満になるからどうしたものか・・・」

この時期、夏の賞与になると、社員にいくら出せばいいか、相談を受けます。
賞与というものは、毎月の給与と異なり、利益の配分です。原資がなければ出せません。

賞与を基本給のnか月分とする大きなデメリット

一番よくないのは、基本給のnヶ月分という出し方です。

例えば、「賞与は基本給の年4.5か月」と決めておいて、夏は2か月、冬2.5か月出す。
こうすれば、社員ごとにいくら出せばいいのか悩む必要がありません。

売上や利益が昨年と変わらなければ昨年と同じに。
昨年より売上や利益が落ちてきていれば、「あまり賞与を下げて社員のモチベーションを下げられても困るし、今期は4か月にしておくか」となるわけです。

この考え方はメリットとして2つあります。

  • 経営者が賞与を決めるのが楽で、あまり悩まなくて済む
  • 良くも悪くも平等で社員ごとに差がない

ただ、このやり方はメリットよりもデメリットの方が大きいです。

なぜ、この考え方がよくないのか。
それは、賞与が給与の延長線上になっているので、会社が賞与の算定期間で儲かっていたかどうかは社員に直接関係なくなるからです。

会社が儲かっていようが、苦しかろうが、基本給のnヶ月分もらえると決まっているなら、頑張って貢献しようという気持ちがなくなります。極端な話、賞与算定期間でどれだけ頑張っても、適当に仕事をしても、もらえる賞与が決まっているなら、必死で頑張ろうという気持ちも高まりません。「決まった額もらえたらいいや」という考え方なので会社の業績に関心がなくなります。

こんな話をすると、

「とはいってもウチはファミリー企業のようなものだから、社員ごとに差をつけてしまうと社風が悪くなるのではないか」

と心配される社長もいらっしゃいますが、こんな場合はどうでしょうか。

志高くやりがいを持ち頑張る若手社員がいたとします。若手社員は基本給がそもそも中堅社員と比べて低いですし、賞与が給与のnか月分であれば、算定期間にいくら頑張ったところでもらえる額は変わりません。すると、優秀な若手社員ほど、頑張りが賞与に反映されず、モチベーションを下げていきます

すぐに辞めることはないかもしれませんが、もっと自分の頑張りを評価してくれるやりがいある職場がみつかれば転職してしまうでしょう。いざ退職となって、その理由を聞いても、角が立たないように本当のことは話してくれません。

優秀な若手社員がモチベーションを下げる大きな原因の一つがこの賞与の出し方です。こういう会社で働く社員は、たとえ業績が苦しくなっても「社長、今期のボーナスはどのくらい出そうですか?楽しみです」と平気で言ってきます。

社長は心の中で思うでしょう。

「ウチの社員はなぜ業績に興味をもとうとしないのか!ちょっと考えれば業績が下がっていることくらいわかるだろうに・・・」

しかし、いくら社長が心の中で思っていたところで社員は業績に興味をもとうとしません。

では、どうすればいいのでしょうか。

社員に業績に興味を持たせる賞与の出し方

賞与は給与の延長線上ではなく、完全に給与と切り分けて考えましょう。

なぜなら、給与は生活をするうえで必要なものですが、賞与は、業績による原資の配分だからです。儲かっていれば沢山出してあげられますが、儲かっていなければ出したくても出せません。

給与と賞与では、性質も評価期間も異なります。給与の性質は、生活の安定で、評価期間も1年単位と長いです。春になると昇給時期が来て、1年間の頑張りで昇給が決まります。一方、賞与の性質は、完全に業績の利益配分で、原資ありきです。評価期間も賞与支給が年2回の場合、算定対象期間も2回に分かれ、6か月単位と短いです。

このように、性質も評価期間も異なるのですから、そもそも賞与の計算方法を給与に連動させる必要はないのです。

賞与を年2回支給しているなら、半期の粗利からどのくらい賞与が出せるか原資によって決定すべきです。社員に、会社の業績と本人の人事評価によって配分すると伝え、開示できるなら半期の利益を社員に公表しましょう。例えば、粗利の30%を賞与原資にするとすれば、会社の業績に興味をもたざるをえません。

社員に自社の粗利はどうかというのをグラフにして公表してみてはどうでしょうか。
もちろん社員に公表できるものとできないものもあるでしょうが、できるものについては公表することで数字に社員の意識が高まります。

前年対比より下がっていれば、何が原因か、粗利を上げるにはどういう仕事をすればいいかという発想になりますし、上がっていれば、会社をもっと盛り立てて、たくさん賞与をもらおうという発想になります。

経営の数字を全てブラックボックスの状態では興味の持ちようがありません。
数字への意識づけは経営意識を醸成させるために重要です。

また、賞与を基本給のnヶ月分としているため、賞与を出し過ぎないように色々手当をつけて安く抑えようとされている会社も見かけますが、手当が多いと非正社員との同一労働同一賃金の問題にも関わってきます。

賞与を原資ベースにすれば、基本給が高くても、連動させる必要がないので同一労働同一賃金の問題も考えなくてすむというメリットもあります。

あなたの会社の賞与の計算方法は、社員全員が業績に興味をもち、働きがいがもてるものになっていますか?


このようなことにご興味がある方のため、無料相談を実施しておりますので、ぜひご利用ください。

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