とあるスタッフのことで悩んでいる。彼女は給与が仕事に見合っていない。降給はできないものか。

医療機関の給与体系は、年功序列のものが多く、年齢は30歳まで上がり、後は勤続年数によって給与が上がっていく場合が多いです。

医師会から出ている賃金表であったり、中には院長の勤務医時代の賃金テーブルをそのまま自院に流用している場合も散見されます。

ここ2、3年は新型コロナウイルスの影響で患者さんが減っているので、給与が据え置きというクリニックも多いですが、毎年少しずつ勤続年数に応じて昇給しているクリニックもあります。

ただ、昇給することはあっても降給するという仕組みがあるクリニックはほとんどありません。

「仕組みがある」ということは、
院内に明確な規定が存在し、かつその規定に基づき運用され、スタッフにも周知されているかどうか
ということになります。

ここでいう「規定」とは、就業規則や給与規程が自院にある、という単純な話ではなく、以下の2点が問われます。

  1. どういう場合に降給するのかが明確に定められている
  2. 院長の裁量で場当たり的に降給するかどうかを判断するのではなく院内に評価制度や賃金制度がある

例えば、今回の例でいうなら、「人事考課により彼女の働きぶりは給与に値しないから下げる」といっても、評価制度や賃金制度がなければ、降給の対象となるスタッフが、「人事考課でどの程度の働きぶりで、どのように貢献度が低いから、結果として降給やむなし」なのかが客観的に説明できません。

重要なのは、賃金が評価制度に連動している仕組みが既に院内にあり、評価制度に基づいて運用していることがスタッフにも事前に周知されている状態で、評価制度に基づいた評価が低いため、賃金を降給する、ということが院内にあることです。

そのため、評価制度と賃金制度が単にあるというだけでなく、この2つが有機的に紐づけられていて、密接に連動していなければなりませんし、スタッフにもあらかじめ、どういう評価制度や賃金制度で評価し、賃金がきまるのかをオープンにしておく必要があります。

ここがオープンになっていないと、降給の根拠が不明確でスタッフからの納得が得られません。

評価制度や賃金制度がない状態で降給しても降給基準が院内にないので、スタッフに降給理由を納得できるような説明ができず、賃金を不当に下げられたとしか思わなくなります。

不当に下げられたと思うスタッフは、当然モチベーションは下がりますし、クリニックに対し、いい感情は生まれません。場合によっては、裁判等の争いに発展するケースも考えられます。

また、医療機関のスタッフは横のつながりが多いため、自院の他のスタッフのみならず、他院にいる友人知人にも触れられると、クリニックのイメージも下がり、今後の採用活動にも響いてきます。

院内に評価と賃金の仕組みがある4つのメリット

院内に明確な仕組みがあり、スタッフにあらかじめ周知されていて、スタッフの同意のもとで評価制度と賃金制度が機能していたらどうでしょうか。

1.降給してもスタッフの納得が得られる

降給理由も客観的に明確であり、降給されたスタッフは「今回はたまたま貢献度が低かったから仕方がない」という気持ちになり、
院長がたとえ「このスタッフに辞めて欲しい」と思っていても、
「今回は評価は低かったから残念ながら降給になったが、あなたの頑張りを期待しているので、また頑張って昇給してほしい」と伝えれば、
相手も人ですから、院長がそこまで思ってくれるなら期待に応えようという気持ちになりませんか。

なにより本人の納得感が得られますし、次は自分の賃金や賞与を上げるために頑張ろうという原動力になるので、今後の働きぶりは天と地ほど差があります。

このスタッフだけの問題ではありません。他のスタッフや院外への悪影響もありません。

2.賃上げへの心理的抵抗がなくなる

毎月の給与をなかなか昇給できない理由として、「給与は一度上げたら下げられない」という心理的抵抗にあります。

ただ、降給ができれば、昇給についても上記のような心理的抵抗もなくなります。昇降給に柔軟性がでてくるため、貢献度の高いスタッフには思い切った昇給もできます。
昇給することにためらいがなくなれば、「このクリニックでは私の頑張りに応えてもらえる」と若手スタッフのモチベーションアップにもつながりますから抜擢人事も可能になります。

3.スタッフの雇用維持につながる

降給というと、スタッフにデメリットしかないような感じるかもしれませんが、実はメリットもあります。

例えば、院長が今の給与では、このスタッフに辞めてもらうしかないという場合や、他のスタッフから不平不満が出ていても、院長が納得できる給与ならこのまま働いてもらってもいいということも可能となります。

本人も働きに対し、給与が高いと院長や他のスタッフからプレッシャーを感じることはありますが、仕事に見合った給与になることで、院長や他のスタッフも納得感が得られ、本人は雇用維持につながるため、実はクリニックだけではなくスタッフにもメリットがあります。

4.スタッフの働く意識が変わる

「当院では貢献度に見合った給与を支給する」ということを口頭で伝えるだけでなく、頑張りでどう給与があがるのかを、仕組み化し、形で見えるようにオープンにすれば、評価が悪くなると降給になるので、日々の業務でも帯を締めて職務に取り組むようになり、スタッフの意識も変わってきます。
また、頑張りが正当な評価につながれば、今よりいい給与がもらえるように努力しようという意識も醸成されます。

実際に勤続年数が長いだけで貢献度が低いスタッフに困っているというケースも多く相談をいただき、見える仕組みで導入支援をしたところ、
「スタッフの意識が明らかに変わった」という喜びの声を頂いております。

あなたのクリニックでは、スタッフの貢献度に応じた仕組みになっていますか?


このようなことにご興味がある方のため、無料相談を実施しておりますので、ぜひご利用ください。

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